作業療法士にっしのブログ

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脳神経について

今回は新型コロナウイルスの後遺症である嗅覚、味覚異常にも関連した脳神経について書いていきます。

 

 

 

脳神経

脳神経(cranial nerve)は脳に出入りする12対の末梢神経。

頭蓋底に存在する孔を通って頭蓋腔に出入りする。

この12対の脳神経は固有の名称を持つと同時にローマ数字で番号が付けられている。

 

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Ⅰ 嗅神経 〈感覚神経線維〉

 鼻腔の天井部を覆う鼻粘膜嗅部の上皮層中に嗅覚を受容する嗅細胞が存在。

 嗅神経はこの嗅細胞から出る中枢性突起が集まってできる約20本の嗅糸(神経線維束)からなる。

 嗅糸は鼻腔の天井をつくる篩骨篩板の小孔を通って前頭蓋窩に入り、そこに存在する嗅球に達して嗅覚を伝える。

 その他、嗅神経の特徴としては嗅神経が感覚細胞であり、ニューロンでもある嗅細胞の細胞質突起そのものであること。脳神経の中で最も細く短い神経であること。

 

 嗅覚消失のような嗅覚障害は嗅神経の損傷によって起こる。

 特に篩骨篩板の損傷や骨折、脳腫瘍などでみられる。

 

新型コロナウイルスによる嗅覚障害のメカニズムはいまだ明らかになっていないが、後遺症として残存するケースにおいては嗅神経の損傷も疑われます。

新型コロナウイルスが一日でも早く終息することと、後遺症状の方の回復を強く願っています。

 

Ⅱ 視神経 〈感覚神経線維〉

 ヒトが外界から受け入れる情報量のうち、約90%は視覚が担っていると言われる。

 視神経は髄膜の続きである神経鞘に包まれている。

 視神経は網膜内の最内層にある網膜神経節細胞の軸索が約100本集まってできる。

 眼球の後極近くで強膜を貫いて、視神経管を通って頭蓋腔に入る。その後、左右の視神経は合わさり、視神経交叉(視交叉)をつくる。さらに大脳脚の外側を迂回して、多くは外側膝状体に、一部は上丘、視蓋前域、視床下部の視交叉上核に達する。

 中頭蓋窩で下垂体や内頚動脈に近接する視交叉では、網膜の鼻側半から発した軸索は交叉しない(完全半交叉)。

 視神経、視交叉、視索の損傷により特徴的な視野欠損が出現するため、視野測定によって損傷部位を診断することができる。

 

Ⅲ 動眼神経 〈混合性神経線維:運動神経線維と副交感神経節前線維〉

 動眼神経は、中脳に存在する運動核である動眼神経核と副交感性の動眼神経副核(エディンガー・ウェストファル核)ニューロンから発した遠心性神経線維を含む。

 動眼神経は大脳脚の内側面から出て、前方に向かい海綿静脈洞の上壁に沿って前走し、上眼窩裂を通って眼窩に入る。

 眼窩で上枝と下枝に分かれ、上枝は上眼瞼挙筋と上直筋、下枝は内側直筋と下直筋と下斜筋をそれぞれ支配する。

 また、動眼神経副核からおこる副交感神経節前線維は眼窩内の毛様体神経節に入り、そこで節後ニューロンと交代して節後線維となり、短毛様体神経として眼球に進入し、平滑筋である瞳孔括約筋毛様体筋を支配する。

 動眼神経支配の4つの骨格筋と2つの平滑筋の内、上直筋だけが反対側の動眼神経核ニューロンの支配を受ける(対側性支配)。

 動眼神経は中頭蓋窩のトルコ鞍の外側縁に接し、海綿静脈洞の上壁に沿って前走するので、この近傍の腫瘍や動脈瘤などによって海綿静脈洞が圧迫され、動眼神経が損傷、麻痺されることがある。

 動眼神経麻痺による症状としては

眼瞼下垂:上眼瞼挙筋の麻痺により上眼瞼が垂れ下がる。

外斜視、複視動眼神経支配の4つの外眼筋(上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋)の麻痺が起こるが、上斜筋(滑車神経支配)と外側直筋(外転神経支配)は麻痺しないため、眼球は外下方を向く。

瞳孔散大(散瞳)、対光反射の消失、調節反射の消失:瞳孔括約筋と毛様体筋の麻痺によって起こる。

 

Ⅳ 滑車神経 〈運動神経線維〉

 滑車神経は嗅神経の次に細い脳神経であり、脳の背側から出る唯一の脳神経

 中脳に存在する運動核である滑車神経核ニューロンから発した運動神経線維のみを含む。

 中脳の背側部にある下丘のすぐ下方で交叉(滑車神経交叉)した後、中脳の背側から出て大脳脚を回り、錐体尖の近くで硬膜を貫き、さらに海綿静脈洞の上壁を前走し、上眼窩裂を通って眼窩に入り、反対側の上斜筋を支配する(対側性支配)。

 滑車神経麻痺では、下方を見るときに麻痺側の眼球を下方に十分に向けることができないので、物が二重に見える(複視)。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

続きは時間と元気があれば次回・・・